硬いコロコロ便に悩む方へ。刺激で「押し出す」のではなく、腸を「潤して出す」という選択肢があります。

  • 潤腸湯は明代『万病回春』を出典とする「潤して自然に通す」設計の漢方。
  • 乾燥性便秘や体力がやや落ちた人に向き、腹痛が出にくい緩やかな通便を目指します。
  • 生活改善や他剤で不十分な時の第二手として、証を見極めながら活用します。

便秘は「出ない」だけでなく、痔や裂肛、腹部の張り、肌荒れ、気分の落ち込みなど全身に波及します。刺激の強い下剤は一時的に流せても、乾燥体質では逆効果になることも。そんな時に候補となるのが、腸に潤いを与えて自然な通便を取り戻す「潤腸湯(じゅんちょうとう)」です。

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小島の視点

健康カウンセリングで感じるのは、特に女性に「乾燥性便秘」が見過ごされがちなことです。便が柔らかいのに出にくい場合は、まず腹筋、骨盤底の機能づくりが有効です。しかし、便そのものが硬く乾いているタイプは、刺激しても痛いだけ。私はこの乾燥型に「潤して出す」設計の潤腸湯をよく用います。水と油の潤いを戻し、気の巡りを整え、必要最小限の瀉下で出口を開ける穏やかな組み立てだからです。

30秒セルフチェック「私は乾燥性便秘?」

  • 便がうさぎの糞のようにコロコロで硬い
  • 排便時に痛みがあり、出ても残便感が強い
  • お腹の張りやガスがたまるが、激しい腹痛は少ない
  • 皮膚や口の乾燥が気になる
  • 産後・病後・高齢で体力が落ちている

当てはまる項目が多いほど、潤腸湯の適応に近づきます。

What(どんな処方か)

  • 出典は明代の医書『万病回春』(1587年)。強く押し流すのではなく、体液と粘滑性を補って「潤して出す」緩下が思想の中心。
  • 10の生薬から構成。油分を含む種子生薬(麻子仁、桃仁、杏仁)が潤いを供給し、地黄、当帰が血と体液を補い、厚朴、枳実がガスと膨満をさばき、少量の大黄で出口を調整。黄芩、甘草は炎症バランスと方剤の調和を担当。

主要生薬と役割の要点(クリックで開く)

生薬主要作用補足
地黄潤い、補血体液、血を補い乾燥改善
当帰補血、活血血行改善と粘膜の潤い
麻子仁潤い、緩下便を柔らかくし通じを促す
杏仁潤い脂肪油で腸を滑らかに
桃仁活血、潤い硬便の通過を助ける
厚朴理気、除満ガス、膨満の軽減
枳実理気、通便腸管運動の後押し
大黄瀉下少量で出口調整
黄芩清熱、消炎粘膜の炎症バランス
甘草補気、調和方剤全体の調整、胃腸保護
  • 潤い:麻子仁、杏仁、桃仁、地黄、当帰
  • 腹満ガス:厚朴、枳実
  • 出口調整:大黄
  • 消炎、調和:黄芩、甘草

誰に向くか?

  • 乾燥性便秘(硬いコロコロ便、排便痛、残便感)
  • 体力中等度〜やや虚弱(高齢者、産後、病後で体液や血が不足しがち)
  • 便秘型IBSのうち、水分不足が背景のタイプ
  • 強い炎症や余剰が前景の実証、肥満傾向は他処方を検討

いつ使うか?使い分け

使うと良い場面

  • 生活改善や浸透圧性下剤(例マグネシウム)で不十分
  • 刺激性下剤で腹痛、下痢を起こしやすい
  • 硬便が痔を悪化させやすい

他処方との使い分け

  • 麻子仁丸:同じく「潤して出す」。潤腸湯は補血(地黄、当帰)と理気(厚朴、枳実)も併せ持ち、乾燥+膨満が同時にある虚弱寄りで選びやすい。
  • 大黄甘草湯:即効の通便を狙うが刺激が相対的に強い。乾燥、虚弱には合わないことも。

禁忌・注意

  • 妊娠中、妊娠の可能性がある場合は原則避ける(大黄、桃仁)
  • 明らかな下痢、極度の虚弱、電解質異常リスク(甘草関連)は慎重に
  • 各生薬アレルギー既往は専門家に相談

使い方

  • 目安用量:エキス剤7.5g/日を2〜3回に分服。瀉下が出やすい体質は少量から漸増。
  • 飲み方:食前または食間。十分な水分、良質な油、可溶性食物繊維、排便姿勢(足台)を併用。
  • モニタリング:便性状、回数、腹部症状、浮腫、血圧、低K血症所見。長期連用は定期的に見直し。
  • 期待できる変化:腹痛が少ない自然排便リズム、硬便、膨満、残便感の軽減。

よくある質問

どれくらいで効きますか?→体質や便性状によります。即効の瀉下だけを狙う設計ではなく、潤いと粘滑性の回復を重視するため、数日のスパンで「硬さの緩和→通じの自然化」を感じる方が多い印象です。

妊娠中でも飲めますか? →妊娠中、妊娠の可能性がある場合は原則避けます。自己判断での服用は控え、必ず医師や薬剤師に相談してください。

市販の便秘薬と併用できますか?→ 併用で効きすぎると腹痛、下痢や電解質異常のリスクが上がります。現在の服薬内容を把握できる専門家に相談してから調整しましょう。

便は柔らかいのに出にくい時は?→ 腹筋、骨盤底機能が原因のことがあります。排便姿勢や呼吸、骨盤底トレーニングを優先し、漢方は適応を見極めてから検討します。

summary

乾燥で硬くなった便を、強引に「押し出す」のではなく「潤して滑らせる」。潤腸湯はその理にかなったアプローチです。便秘は体質、生活背景、ホルモン状況などが絡み合うため、自己判断の長期連用は避け、証に合っているかを専門家と確認しながら、食事、姿勢、運動と組み合わせて整えていきましょう。

医療情報に関する注意)本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の診断、治療は医療専門家にご相談ください。


参考文献(リンク)

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Author of this article

帝京大学大学院薬学研究科卒業(生物有機化学専攻)。薬剤師として20年以上、総合病院門前薬局や在宅医療に従事。東洋医学、脳機能学、量子医療を学び、2024年7月より神宮前統合医療クリニックにて精密栄養カウンセラーとして活動開始。血液、遺伝子、ウェアラブルデータを活用し、薬、サプリ、食事を統合した個別最適な健康アプローチを提供。各分野のスペシャリストと連携し、科学と伝統医学を融合させ、一人ひとりに最適な健康を導くことに尽力している。

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