「病はどこから来るのか?」
古代中国の医学書『黄帝内経』の中でも、真理の精髄として位置づけられるのが「金匱真言論篇」です。
「金匱」は金属の貴重な書庫、「真言」は変わらぬ真理の言葉。
この章では、病の発生と季節・臓器・時間とのつながりを、驚くほど論理的に説いています。
四季と五臓の密接な関係
『黄帝内経』では、四季の気候変化が、人体の五臓にそれぞれ影響を及ぼすと考えられています。
そのバランスが崩れたとき、私たちは「病気」としてそのずれを体に受け取るのです。
| 季節 | 影響する臓 | よく出る部位 | よく見られる症状 |
|---|---|---|---|
| 春 | 肝 | 首・うなじ | 鼻水・鼻血・花粉症 |
| 夏 | 心 | 胸・わき腹 | 動悸・のぼせ・不眠 |
| 長夏 | 脾 | 背中・腹部 | 下痢・冷え・倦怠感 |
| 秋 | 肺 | 肩・背中 | 咳・喘息・発熱感 |
| 冬 | 腎 | 腰・股・四肢 | 冷え・しびれ・関節痛 |

季節がずれると、病もずれる
こうした「症状の季節感のズレ」は、体と自然のリズムが合っていないことを示しています。
これは『黄帝内経』でいう「未病(みびょう)」、すなわち“まだ病気になっていないが、兆候がある状態”なのです。
陰陽と時間帯のリズム
| 時間帯 | 陰陽分類 | 意味 |
|---|---|---|
| 朝〜正午 | 陽中の陽 | 陽気が最も高まる時間 |
| 正午〜夕方 | 陽中の陰 | 陽がゆるやかに陰に転じる |
| 夕方〜深夜 | 陰中の陰 | 静寂と回復の時間 |
| 深夜〜朝 | 陰中の陽 | 陽気が内から生まれる時間 |
身体の陰陽配置と臓器の陰陽分類
背中 → 陽の通り道 / お腹 → 陰の通り道
| 臓器 | 陰陽分類 |
|---|---|
| 肝 | 陰中の陽 |
| 心 | 陽中の陽 |
| 脾 | 陰中の至陰 |
| 肺 | 陽中の陰 |
| 腎 | 陰中の陰 |
病の根本を読み解く“季節と部位”
- 春に首が痛い → 肝のバランスの乱れ
- 夏に胸が熱い → 心の過熱
- 秋に背中がつらい → 肺の乾燥
- 冬に足腰が冷える → 腎の衰え
精(せい)を蓄える=命の礎
精が充実していれば、季節の邪気に打ち勝ち、病にかかりにくくなります。
- 春 → 温病にならない
- 夏 → 汗が漏れすぎない
- 秋 → 熱病を起こさない
- 冬 → 冷えに強い
まとめ|自然と響き合う体をつくる
- 病気は、四季・時間・陰陽の「ズレ」から始まる
- 人体は自然の一部であり、自然のリズムと調和することが健康の鍵
- 『金匱真言論篇』は、自然と身体をつなぐ“地図”のような存在
私たちがすべきことは、体の声を聞き、季節の風を読み、陰陽の流れに従うこと。
それこそが、未病を防ぎ、真の健康を築く第一歩なのです。

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