水を飲んでいるのに、身体が重い。茯苓(ぶくりょう)を考える前に眺めたいこと

午後、甘いものを少し多めに食べた日。

私の身体では、まず食後の眠気から始まることがあります。

夕方になると、お腹が張ってくる。夜はいつもより長く眠る。それでも、朝にはだるさが残っている。足にはむくみ感が出て、後鼻漏の粘りが気になる日もあります。

これは、私の身体で起きやすい反応です。

甘いものを食べれば必ずこうなる、という話ではありません。ただ、甘いものが重なった時期には、眠気、胃腸の張り、長い睡眠、足の重さ、鼻や喉の粘りが、一つながりのように出てくることがあります。

むくみを感じたとき、私たちはつい、「何を飲めばよいか」を探してしまいます。

でも、その前に。

身体の中で、何が同時に起きているのか。それを一度、眺めてみたいのです。

茯苓の話は、そのあとでいいと思っています。

甘いものを食べた午後、私の身体で連なる変化

これらの変化は、私の身体では、ばらばらにではなく、同じ時期にまとめて出てくることが多いです。

一つひとつは、よくあることかもしれません。食後に眠くなる人は多いですし、むくみも、疲れも、めずらしいものではありません。

以前の私なら、足のむくみだけを見て、そこに何かを足そうとしていたと思います。むくみに良いとされるものを探して、飲んでみる。それで手を打った気になっていました。

けれど、あるときから、一つの症状だけを取り出して考えるのを、少しやめました。

足がむくんだ日、私の身体では、たいてい他のことも起きています。眠りが長く、朝が重く、お腹が張っている。

それらを並べて見たとき、むくみだけを切り離して考えるのが、少し不自然に思えたのです。

身体は、一つのサインだけを出しているわけではない。

そう感じてから、私は「何を足すか」を考える前に、「今、何が重なって起きているのか」を眺めるようになりました。

むくみを、足だけの問題にしない

むくみを感じると、私たちの目は、むくんでいる場所に向かいます。

足がむくめば、足を見る。それは自然なことです。

でも、少しだけ視野を広げてみます。

そのむくみが出ている日、身体の他の場所では何が起きているか。眠りは深いか、浅いか。お腹は張っていないか。便や尿は、いつもと同じか。

こうして並べてみると、むくみは足だけの出来事ではなく、身体全体の様子の一部として見えてくることがあります。

足のむくみに何かを足すのではなく、まず身体全体で何が起きているのかを整理する。

Self Hack Labで私が大切にしているのは、この順番です。

足す前に、整理する。

むくみもまた、その順番で眺めたいと思っています。

茯苓(ぶくりょう)とは、どんな生薬か

ここで、ようやく茯苓の話に入ります。

手のひらにのせた、刻み茯苓(ぶくりょう)の乾燥生薬
手のひらにのせた、刻み茯苓。生薬を選ぶ前に、まずその日の身体の反応を眺めています。

茯苓は、マツホド(Wolfiporia cocos)の菌核で、通常は外層をほとんど除いた生薬です。

古くから、漢方の世界で使われてきました。

中医学では、茯苓の性質を、甘・淡(かん・たん)、平(へい)と整理します。

伝統的には、利水滲湿(りすいしんしつ)、健脾(けんぴ)、安神(あんしん)といった文脈で語られます。

これは「効く」という意味ではありません。昔の人が、身体の巡りや水分、消化、眠りとのつながりの中で、この生薬をどう捉えてきたか、という整理の言葉です。

茯苓は、五苓散(ごれいさん)、茯苓飲(ぶくりょういん)、四君子湯(しくんしとう)など、複数の生薬を組み合わせた処方の一部として用いられてきました。だからこそ、茯苓という一つの名前だけで、その人の身体や必要な対策を決めることはできません。

中医学では、水分の偏りをどう見てきたか

むくみを考えるとき、まず大切なのは、身体からの確認が必要なサインを見落とさないことです。

むくみの背景には、医療機関で確認したい状態が隠れていることもあります。

そのうえで、中医学には、また別の眺め方があります。

身体の中の水分を、量が多いか少ないかだけで見るのではなく、「偏り」として捉える見方です。

私は、中医学のこの見方を、便宜上、「水分を受け取る・巡らせる・保つ・外へ出す流れとして眺める」と受け取っています。これは中医学の考え方を日常の言葉に置き換えたもので、血液検査の項目や、生理学的な機能名ではありません。

その流れのどこかに偏りがあると、必要な場所は乾き、いらない場所には溜まる。そんなふうに、水分の「配置」として身体を眺める。私にとっては、そういう見方です。

ここで大切なのは、これは測定できる数値の話ではない、ということです。

血液検査で「水分の巡り」という項目が出るわけではありません。あくまで、東洋医学が長い時間をかけて育ててきた、身体の見方の一つです。

私はこの見方を、正解としてではなく、身体を眺めるためのもう一つのレンズとして持っておくようにしています。

茯苓は、答えではなく、身体を見るためのレンズの一つ

私は、自分の体調や、そのときに服用中のものを確認しながら、茯苓を含む生薬の組み合わせを煎じることがあります。ただし、これは私個人の実践であり、同じような症状がある人に同じ組み合わせを勧めるものではありません。

そうして煎じるとき、私が見ているのは、茯苓そのものの働きではありません。

その時期の自分の身体が、どんな状態にあるか。甘いものが続いていないか。眠りはどうか。お腹の張りや、足の重さはどうか。

そういう身体の様子を、立ち止まって眺めるためのきっかけとして、茯苓があります。

茯苓は、答えではありません。むくみのスイッチを切るボタンでもありません。

私にとっては、「今の身体を、少し眺めてみよう」と思い出させてくれる、レンズのようなものです。

茯苓の前に、重ねて見たいこと

もし今、むくみが気になっているとしたら。

茯苓や、むくみを理由に選ばれがちな何かを探す前に、重ねて見ておきたいことがあります。

食後、眠くなっていないか。お腹は張っていないか。ガスのにおいは、いつもと違わないか。便や尿は、普段と同じか。睡眠は足りているか。朝、だるさは残っていないか。足の重さやむくみは、夕方と朝で違うか。鼻や喉に、粘るような感じはないか。冷たい飲食や、甘いものが続いていないか。

これらは、むくみの原因を決めつけるためのチェックリストではありません。

「これに当てはまるから、水の巡りが悪い」と結論を出すためのものでもありません。

ただ、同じ時期に、身体がどんなサインを一緒に出しているか。それを並べて眺めるための、観察の視点です。

こういうむくみは、セルフケアより先に相談を

ここで、大切なことをお伝えします。

むくみは、体調や生活による一時的な変化で起こることもあります。けれど、腎臓、心臓、甲状腺、静脈やリンパの状態など、医療機関で確認したい背景が隠れていることもあります。

次のような場合は、観察やセルフケアよりも先に、医療機関へご相談ください。

  • 急にむくみが強くなった
  • 尿の量が、普段より明らかに減った
  • 理由の分からない体重増加が続いている
  • 息切れがある、横になると苦しい

そして、次のような場合は、救急受診も含めて、速やかに医療機関へご連絡ください。

  • 片方の脚だけが、急に腫れた、痛い、赤い
  • 胸の痛みや、急な息苦しさがある

これらは、早急な確認が必要となることがあるサインです。自分で原因を判断しようとせず、まず身体を診てもらうことを優先してください。

治療中の方、妊娠中・授乳中の方、持病のある方、処方薬や市販薬を使用中の方は、茯苓を含む生薬製品や漢方薬を新たに使う前に、医師または薬剤師へご相談ください。処方薬を、自己判断で変更したり、中止したりしないでください。

※本内容は、診断や治療を目的とするものではなく、身体の見方や考え方を共有するものです。体調に不安があるときは、医療機関へご相談ください。

三日だけ、眺めてみる観察メモ

最後に、私がときどきやっている、小さな習慣を紹介します。

三日だけ、身体を眺めて、書き留めてみる。それだけの記録です。

何かを飲む、減らす、我慢する、といったことはしません。むくみの原因を決めるためでもありません。ただ、同じ時期に、どんな反応が一緒に起きているかを眺めるための記録です。

同じ時期に複数の変化が重なったことは、原因を決める証明ではありません。身体の反応を一つずつ決めつけずに眺めるための記録です。

食べたものは、良い・悪いを決めるためではなく、その日の身体の反応と並べて眺めるために書き留めます。

  • その日、甘いものや冷たい飲食をとったか
  • 食後の眠気
  • お腹の張りや、ガスの変化
  • 便の状態
  • 尿の回数や、普段との違い
  • 睡眠時間と、起きたときのだるさ
  • 足の重さや、むくみ感
  • 鼻や喉の粘り、後鼻漏の感じ

点数をつける必要も、良し悪しを判断する必要もありません。三日で身体のくせが全部わかる、というものでもありません。

ただ、並べて眺めていると、自分の身体の反応に、少しだけ見えてくることがあります。

その気づきは、どんな生薬よりも先に、自分の身体から受け取れるものだと思っています。

最後に

甘いものを食べた午後、自分の身体では、どんな反応が重なっているのか。

眠気、お腹の張り、足のむくみ、鼻の粘り。

それは、本当にバラバラの出来事でしょうか。

生薬を急いで選ぶ前に、まず身体の反応を眺める。

その時間の先で、茯苓のような生薬を、自分の身体にとってどう位置づけるのか。

それを、少しずつ考えていけたらと思っています。


参考資料

  • 国立医薬品食品衛生研究所「日本薬局方名称データベース:ブクリョウ」
  • ツムラ「生薬辞典:茯苓」
  • 日本腎臓学会「腎臓がわるくなったときの症状」
  • 日本血管外科学会「深部静脈血栓症って?」

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この記事を書いた人

小島 義教

薬剤師/中西医統合実践家

薬剤師として20年以上、総合病院前の薬局や在宅医療の現場で、多くの方の健康相談に関わってきました。

自身が薬剤性肝障害を経験したことをきっかけに、健康法を増やす前に、まず今の身体で何が起きているのかを整理する「体質整理」という考え方を大切にしています。

現在は文海先生とともに、血液データ、生活背景、睡眠、食事、便や尿などの日々の身体の反応を重ねながら、身体を一つの症状だけで決めないための中西医統合の視点を発信しています。

このブログでは、薬剤師としての知識だけでなく、自分自身の体質ログや迷い、臨床で学んだことも交えながら、身体を責めずに次の一歩を考えるためのヒントをお届けします。

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