この記事の要約(3行)
- 足三里は、疲れに直接効くボタンではなく、胃腸と全身のだるさを一緒に見るための、東洋医学の入口です。
- 押す前に、食欲、食後の眠気、お腹の張り、便、脚の重さ、朝の回復感を、一緒に眺めてみます。
- 強く押して治そうとせず、触れて身体を感じる。急な強い症状があるときは、ツボで様子を見ず医療機関へ相談します。
疲れがたまると、どこか一点を押せば楽になる気がします。
「足三里は、疲れに効くツボ」
そう聞いて、すねの外側を探した経験がある方も、多いかもしれません。
押すと、少し軽くなる気がする日もあります。
でも、しばらくするとまた戻ってくる。
このくり返しの中で、私はあることに気づきました。
足三里は、疲れを消すためのボタンではないのかもしれない。
むしろ、足三里が気になる日に、
胃腸や便、食欲、脚の重さ、眠りも一緒に眺めてみる。
そのための入口として使うほうが、
自分の身体を、よく見られるようになったのです。
疲れたとき、「ツボを押せば何とかなる」と思ってしまう
夕方になると、身体が重くなる。
肩の奥が張って、頭に薄い霧がかかったようになる。
そんなとき、スマホで「疲れ ツボ」と調べて、
足三里という言葉にたどり着く。
すねの外側を押してみる。
少し響く。
なんとなく、楽になった気がする。
でも、次の日もまた、同じように疲れている。
私も以前は、「一つ押せば何とかなる場所」を探していました。
薬剤師として長く働く中で、
足りないものを足す、効くものを探す。
そういう発想が、身についていたのだと思います。
でも、疲れているときの身体は、
一点だけの問題ではないことが、多いのです。
だから今日は、足三里を「疲れに効くツボ」として押す話ではなく、
足三里をきっかけに、身体全体を眺め直す話をします。
足三里は、どこにあるのか
足三里は、すねの外側にあるツボです。
おおよその位置は、次のあたりです。
- ひざのお皿の外下にできるくぼみから、指4本分ほど下
- すねの骨の、すぐ外側
このあたりを、指で軽く探ってみます。
ただ、位置には個人差があります。
「ここが正解」と一点に決めすぎず、
触れてみて、少し響く、押すと心地よいと感じる場所を、目安にしてください。
東洋医学で、足三里が「胃腸と全身のだるさ」の入口とされてきた理由
足三里は、東洋医学では「足陽明胃経(あしようめいいけい)」という流れの上にある、とされてきました。
胃腸の働きと関わりが深いツボとして扱われ、
古くから、胃の状態を考えるときの一つの目安とされてきました。
(専門的には「胃の下合穴(げごうけつ)」と呼ばれます)
東洋医学には、
胃腸の元気と、全身の元気を、切り離さずに見る考え方があります。
食べたものを、身体を動かす力に変える。
その入り口が、胃腸だと考えられてきたのです。
だから、全身がだるいとき、
足三里や胃腸のあたりに目を向ける。
こうした見方は、東洋医学が長い時間をかけて育ててきたものです。
これは、検査値や診断を置き換える話ではありません。
検査や医療の情報と並行して、
日々の身体の反応をどう眺めるか。
足三里は、そのための東洋医学の見方の一つだと考えています。
文海先生との対話を通じて、
胃腸と全身のだるさを切り離さずに考える姿勢を、
私は少しずつ学んできました。
足三里を押す前に、一緒に見てみたい6つのこと
足三里が気になる日は、そこだけで終わりにせず、
身体の他の反応も、一緒に眺めてみます。
足三里が気になる日に、一緒に見てみたいこと
- 食欲はあるか
- 食後に、眠気やお腹の張りが出ていないか
- 便は、いつもと違っていないか
- 脚が重い、むくむ、だるいと感じていないか
- 朝、身体が回復した感じがあるか
- 暑さ、冷房、外食、睡眠不足、仕事量など、最近変わったことはないか
これらを、良い悪いで判断しなくて大丈夫です。
ただ、「今日はどうだろう」と眺めてみる。
それだけでも、疲れを一つの原因に決めつけない練習になります。
強く押して治そうとしない。触れて、身体を感じる
足三里は、強く押して痛みを我慢する場所ではありません。
- ひざの下から、すねの外側を、軽く触れる
- 自分にとって「少し響く」「押すと気持ちがよい」場所を探す
- 呼吸に合わせて、無理のない範囲で、そっと押す
痛みを我慢して押し込む必要はありません。
そして押しながら、脚だけでなく、
お腹、呼吸、眠り、身体全体の重さにも、意識を向けてみます。
この記事で紹介する触れ方は、症状を治すことを目的としたものではありません。
自分の身体を、もう一度感じ直すための、静かなセルフケアの入口です。
なお、皮膚に傷や炎症がある場所、強い痛みやしびれ、急な腫れがある場合は、
自己流で刺激せず、控えてください。
ツボで様子を見ず、医療につなぐべき疲れ
疲れの中には、
ツボやセルフケアで様子を見てはいけないものもあります。
次のような症状があるときは、
「疲れ」として様子を見ず、迷わず119を検討してください。
- 急な息苦しさ、呼吸のしづらさ
- 胸の中央が締め付けられる、または圧迫されるような痛み
- 意識がもうろうとする、受け答えがおかしい
- 顔の片側が動かしにくい、ろれつが回りにくい
- 突然、片方の腕や足に力が入りにくい
また、次のような場合も、
ツボだけで様子を見ず、医療機関へ相談してください。
- 発熱が続く
- 意図しない体重減少が続く
- 強い疲れがある
- 疲れが長引き、日常生活に支障が出ている
観察は、医療の代わりではありません。
必要なときに、必要な場所へつながるための、手前の一歩です。
厚生労働省も、急な呼吸困難、胸の圧迫感、ろれつの回りにくさ、片側の手足に力が入りにくい症状などを、救急要請の目安として示しています。
https://kakarikata.mhlw.go.jp/kakaritsuke/urgency.html
次回:食べているのに疲れるのは、なぜ?
足三里は、疲れと胃腸を一緒に見るための、入口でした。
では、
「ちゃんと食べているのに、なぜか疲れる」
そんなとき、身体では何が起きているのか。
次回は、夏に弱りやすい胃腸の見方について書きます。
疲れているとき、身体は「困った敵」のように感じます。
でも、足三里に触れながら身体全体を眺めてみると、
身体は、何かを伝えようとしているだけなのかもしれません。
足す前に、並べる。
決める前に、観察する。
ツボも、その入口の一つです。
よくある質問
Q. 足三里を押せば、疲れは取れますか?
A. 足三里は、疲れを直接取るためのボタンではありません。疲れているときに、胃腸や全身の状態を一緒に見るための、東洋医学の入口として使うのがおすすめです。
Q. 足三里は、1日にどれくらい押せばいいですか?
A. 回数や時間を決めることより、痛みが出ない程度に、軽く触れることを大切にしてください。同じ場所を何度も強く押し続ける必要はありません。押して痛い、違和感が強い、皮膚に傷や炎症がある場合は控えてください。
Q. 足三里の正確な位置がわかりません。
A. 位置には個人差があります。ひざの外下のくぼみから指4本分ほど下、すねの骨の外側を目安に、触れて少し響く場所を探してみてください。一点に決めすぎなくて大丈夫です。
Q. 押しても疲れが変わりません。
A. ツボは、疲れをすぐに消すためのものではありません。食欲、便、睡眠、生活の変化なども一緒に見てみて、それでも強い疲れや長引く疲れが続く場合は、医療機関へ相談してください。
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※本内容は診断や治療を目的とするものではなく、身体の見方や考え方を共有するものです。体調不良がある場合は医療機関へご相談ください。

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